特集寄稿
函館で、先生をしながらボートをやっています

昭和55年入学 稲垣 喜彦

1.北大ボート部OBで、現在北海道の高校でボート部の顧問をしているのは何人かご存知ですか? 結構いるんですよ、これが。入学年次順に書くと、
@ 昭和53年入学の伊藤仁志さん(室蘭清水ヶ丘高校)、
A 昭和55年入学の稲垣(函館西高校)、
B 昭和58年入学の吉尾洋(小樽桜陽高校)、
C 昭和60年入学の小川薫(稚内高校)、
D それにこの春から教員になった、平成元年入学の坂元(笠井)光(釧路工業高校)の5人です。
(ご退職されていますが昭和28年入学の坂下五郎先生は小樽工業高校ですばらしい実績と選手を育てられています。今は北海道ボート協会の理事長を務められ、北海道のボート界の大黒柱となっておられることは、もちろんみなさんご周知のことと思います。)
 卒業後、大学でもボートを漕いでいる選手としては、稚内高校の長山綾(龍谷大学)の実績が群を抜いて素晴らしく、高校3年から大学1年と2年連続で世界ジュニア選手権に出場していますし、昨年の全日本新人戦女子シングルで優勝、今年のインカレでも女子フォアで優勝しています。その他では同じく稚内の佐藤果純(日体大)が今年の軽量級で女子クオドで優勝しています。また函館西高校では冨岡真希(龍谷大学)が今年のインカレ女子ダブルで優勝しています。その他では函館西高校の五十嵐美生が鹿屋体育大学に、本間陽子が日体大短大に、釜谷理子が東北学院大学に進学しています。(彼女たちが今後、北大の脅威になるまでにはもう少し時間がかかるでしょう。)
 あっ、忘れてはなりません。現役北大ボート部の佐々木陽平は稚内高校ボート部の卒業生です。陽平は私の稚内高校在籍時の生徒で、彼は私と小川、そして杉藤コーチの3人の優秀な指導者に育てられていますから、それはもう間違いなく素晴らしい選手のはずなんです、はい。

※編集部注:佐々木陽平選手は平成9年入学(水産学部)で、2年目で対校エイト漕手。函館に移行してからも軽量級選手権に北大代表として出場(平成11年、エイト準優勝)。

2.高校(ジュニア)と大学・社会人(シニア)の連携

 今年度から全国高体連強化部の強化コーチ(北海道ブロック)になりました。この強化コーチというのは、「北海道」の他に「東北・関東・東海・北信越・近畿・中国・四国・九州」の計9ブロックから一人ずつ出ています。高体連強化部では、毎年12月のクリスマスの前後に、その次の年の世界ジュニア選手権への派遣選考のための第1次強化合宿を静岡県で行っています。この合宿には、エルゴのデーターと実績を基に全国から約20人ずつの男女が選考され参加します。合宿では水上でのテクニカル指導を中心に6000mや1900mのタイムトライアルを行い、3月に行われる第2次合宿参加の選手を選考します。第2次合宿を経て、場合によっては世界ジュニア選手権に出場する選手をその合宿中に決定したり、6月に行われる派遣選考レースでの勝者が世界ジュニア選手権に出場することになります。
 このようなシステムで世界ジュニア選手権に選手を派遣するようになって10年ということです。年々いろんな部分で改良が進んできているようで、特に3〜4年前からジュニア合宿の指導にもシニアのナショナルコーチが大きくかかわり始めました。これは大きな変革点でした。
 シニアでは杉藤コーチを含めた大林さん・阿部さんのナショナルコーチの体制が急速に実を結び始め、今年の世界選手権での男子軽量級クオドの優勝(優勝ですよ、優勝。しかも世界選手権で。)やシドニーでの男子軽量級ダブルの決勝進出(決勝ですよ、決勝。しかもオリンピックで。)という結果をもぎ取っています。
 シドニー後の日本ボート協会の強化委員会議では、アテネに向けての対策として、シニアコーチの「ジュニアへのテクニカル面での関与を深める」ことが改めて確認されています。今後ますますシニアとジュニアのコーチングの連携が深まることは明らかで、数年後には、世界選手権やオリンピックに出場する選手のほとんどがジュニアの強化合宿経験者か世界ジュニア選手権出場経験者で占めることになるような気がします。
 私たち高校・ジュニアの指導者は日本のボートの強化において最も大切な部分の一つを担っていることになります。

3.高校のボート部の顧問は、みんな……・・。

 ジュニアの強化合宿に参加すればわかるのですが、高校のボートの先生はみんなイカレテいます。明らかにイカレテいます。ボートにイカレテいます。たまにはイカレテいない常識的な方もいらっしゃいますが、答は簡単、そこの学校は弱いです。顧問のイカレテいる度合いとその学校の強さ・実績は明らかに相関関係があり、完璧に比例しているといっていいでしょう。
 この人たちの口から「いや〜、うちの学校は理解がなくてね、…。」とか、「同僚の目が気になって…。」などという言葉は絶対に出てきません。気にしないようにしているのか、あるいは気にもならないのか?それは定かではありませんが、はっきりしているのは物事の優先順位を極めて明確にしているということです。ボートが第一なのです。だから狂っています。
 高校生にボートを教えて結果を出しているような人は、いわゆる指導力があるのは当たり前で、そのような人が職場で教員としての仕事ができないというのは有り得ない話です(そうでもないか?)。その素晴らしい指導力を、明確な優先順位を付けてボートに集中的に注ぎ込んでいるというのが実情です。
 どうです?現役の北大ボート部のみなさん。高校の教員になってボートをやってみませんか?上の5人のうち一番若いのが笠井ですから、もう少し若い人が続いてくれると北海道のボートも面白くなるでしょう。
 どうです?やってみませんか?
 オモシロイぞ〜。奥が深いぞ〜。奥が深いことがもっとわかるぞ〜。

4.異常の奨め

 お世話になっている愛媛県のトレーナーの方と食事をしていた時に、その方から次のようなことを言われたことがあります。「結局この世界、どれだけ異常にやったかの競争なんですよ、稲垣さん。」
 いい言葉でしょ?
 世界選手権やオリンピックで優勝したり決勝に行ったりするなんて、どう考えたって異常ですよね。北海道で優勝したりそのレベルにいる人たちは北海道レベルで異常でしょうし、全日本で優勝したりそのレベルの人たちは全国レベルで異常でしょうし、世界になれば世界的に異常なんですよ、やっぱり。
 なんて素晴らしいことでしょう。
 恥ずかしながら私は現役時代、相当異常にやっていたつもりだったんですが今となっては、やはりそれは「つもり」でしかありません。(もちろん現役時代のその「つもり」は本当の異常への大切なプロセスですが。)
 もしかすると今も「つもり」かもしれません。でも「つもり」かどうかは自分ではなかなかわかりづらいのですが、実は結構簡単にわかる方法があるんです。それは結果を見ればわかります。
 私はまだまだ「つもり」のようです。

 さて、現役のボート部の皆さん。異常になっていますか?
 もっと異常になりましょう。
 北大ボート部で一番異常なのは、やはり杉藤コーチでしょう。生活の安定しない地方国立大学ボート部のプロのコーチなんて杉藤コーチ以外誰がやりますか?相当異常です。現役の皆さん、もっと杉藤コーチを使いましょう。
 彼の持っている人脈はかなりのレベルで異常集団のはずです。私が現役なら、杉藤コーチが戸田に出かける時を見計らって一発勝負をかけます。彼と一緒に戸田に行き、彼の周りにいるすごい選手やコーチを捕まえて、「北大の稲垣といいます。もしよろしければ20分でも30分でもいいですから私のエルゴか漕ぎをみていただけませんでしょうか?」と絶対に頼みますね。それだけでそのすごい人たちと知り合いになれる。そして自分の知らない異常な世界への扉を開けるきっかけができます。
 なんて素晴らしいことでしょう。
 皆さん、上には上がいます。もっと異常になりましょう。とにかく上を目指しましょう。とにかく自分より上の人たち、自分より異常な人たちと一人でも多く知り合いになって、その異常な世界にドップリ浸かることを心がけましょう。
 ボートというハードなこのスポーツの奥の深さをもっともっと探求しましょう。
 もっともっとオモシロクなるぞ〜。